日本結晶学会誌Vol55No3

日本結晶学会誌Vol55No3 page 8/82

電子ブックを開く

このページは 日本結晶学会誌Vol55No3 の電子ブックに掲載されている8ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
日本結晶学会誌Vol55No3

坂田修身νhはχhrの位相からχhiの位相を差し引いた位相差である.±の+は外側の分枝1,-は内側の分枝2の場合である.W=0の場合,分枝1で異常透過,分枝2で異常吸収が起きることは容易にわかる.前述した鏡面反射回折波K Hが純虚数の消衰波になるのはΦHが虚数になる条件:(ΦO-2ρsinθB)2+2?θsin2θB)<0を満たす場合である.つまり,?θ<-(ΦO-2ρsinθB)2 /(2sin2θB).2.2結晶表面上の微小角配置の波動場GAXSWの強度(I=|E O exp(-2πi K O・r)+E S exp(-2πiK S・r)+E H exp(-2πiK H・r)|2)はすでに定式化されていた. 33) 2 2 2I = EO[ 1+ RS + RHexp{ ?4πKOIm(ΦH) z}+ 2RScos[ ?vs ?4πKOΦOz]+ 2RHexp{ ?2πKOIm(ΦH) z}×cos[ vh + 2πKO{ Re(ΦH) +ΦO} z?2πx]+ 2RSRHexp{ ?2πKOIm(ΦH) z}×cos[ ? v + v ?2π{ Re(Φ) ?Φ} z +2πx]](14)R exp( iv ) = E / ER exp( iv ) = E / Eただし, E O, R S, R Hは実数である. GAXSWの強度は網平面間の位置x(0 ? x ? 1,網平面上でx=0, 1)には敏感に強度変調するのに対し,表面に垂直位置z(表面でz=0,結晶外をz<0と定義)には約10 nmとゆるやかに強度変調する(例えば論文35)図8を参照). x依存性を解析的に調べるため, GAXSWの強度式はxを含む項B(x)と含まない項Aによっても表現された. 35) I = A+ B( x)(15)A= {| 1+ R exp( iv )exp( 4πiKΦz) | + R } EBx ( ) = 2RE | 1+Rexp( iv)exp( 4πiKΦz) |?2πK(Φ?Φ) z for realΦvc= ??2πKOΦO z for imaginaryΦHvS s S OdhH h H OsK O H O2 2 2S s O O H OH O S s O O×sin( ? 2πx+ v + v + v )h c dO O H H?1+ RScos( vs + 4πKOΦOz)?= arctan??? RSsin( vs + 4πKOΦOz)?(16)(17)GAXSWの強度とそれぞれの項の計算プロファイル例を図4に示す. GAXSWの強度を式(15)で表した場合,次のことがいえる.1)蛍光強度などの二次放射線強度R fの簡単表示:網平面に垂直方向について,着目する原子の秩序パラメータであるコヒーレント率をf cとする.これはxの位置に割合fの原子が位置し,残りの1-f cは網平面間のほかの位置をランダムに占めることを意味する.したがって,R = A( 1? f ) + { A+ B( x)} f = A+f B( x)f c c c(18)図4全反射臨界角(ΦO=1.83 mrad)前後での計算GAXSW強度A+B(x), xに依存しない項A, x依存項B(x), vs.ブラッグ条件からのはずれ角?θ.(Calculated profiles of position-independent field A,position-dependent field B(x), and total field intensityA+B(x)of grazing-angle standing waves.)Si(111)の22 _ 0回折,入射X線エネルギー17 keVの場合.2)測定条件の最適化,あるいは測定結果の解釈の助け:A, B(x)ともに?θ,ΦOの関数であるので, xをパラメータとして計算することで用いる入射角を最適化できる.予想されるxの近傍でAの変化に比べてB(x)のそれの大きくなるΦOを選ぶ.例えば, x~0,ΦO=1.1 mradに対する計算強度のプロファイルはf c=1では谷を有し, f=0では山を有することから秩序度を敏感に決定できることが予想される.つまり,測定プロファイルからAを差し引くことでB(x)の形状を推測できるので, xやf cの値を予想しやすい.3)GAXSWはブラッグケースの波動場と同じ位置依存性B(x)=-B(x+0.5):ラウエケースの波動場の位置依存性はB L(x)=BL(1-x),かつ, B L(x)=-BL(x+0.5)である.結晶内回折波はラウエ回折のごとく結晶中に進むので,この性質は直感的な予想とは異なる.4)GAXSW強度の腹位置x antinodeの簡単表現:x = ( v + v + v ?π/ 2)/2πantinode h c d(19)x antinodeも?θ,ΦOの関数である.ΦOを固定し?θの関数として位置を調べると,次の特徴がある:?θの低角では0.5に,高角では0に近づく.ΦOがよりスレスレになると,より0.5に近づく.2.3表面構造,薄膜構造への適用Si(111):As 1×1試料にGASXW法を適用し36)構造モデルを仮定せずにAs吸着原子の表面内の位置を格子面間隔の約2%の精度で,かつ,コヒーレント率を0.05の標準偏差で決定できた. 35)また,垂直方向の位置については0~0.3 nmではフィッティングされた秩序度の値に違い174日本結晶学会誌第55巻第3号(2013)