日本結晶学会誌Vol55No3

日本結晶学会誌Vol55No3 page 7/82

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概要:
日本結晶学会誌Vol55No3

表面界面に埋め込まれたナノスケール薄膜・ナノワイヤーの定量的構造研究図2入射波数ベクトルK Oが試料結晶表面にほぼ平行な逆格子ベクトルHに対してブラッグ条件をほぼ満足し,かつ,表面に対して全反射臨界角に近い角度ΦOで入射する場合に生じる波.(Tiepoints andwaves excited by the incident K O at grazing incidenceand exit.)θ:試料表面にほぼ垂直な網平面に対する入射角.θB:ブラッグ角.θ-θB>0,ρ=0の場合の図.ここではラウエ点Lに近い分散面を分枝1,離れた内側を分枝2と称す.図3結晶内外の波の波数ベクトル.(Wave vectors insideand outside a single crystal at grazing incidenceand exit.)P’Oが図2のIVに存在する場合. ?θ=θ-θB>0,逆格子ベクトルH(=OH)の結晶表面となす角ρ>0の場合.χh(=χhr+iχhi),χ_ h ,χoは基板結晶の電気感受率*4(入射X線波長の2乗と結晶構造因子に比例)である. Cは偏光因子である.に生じる結晶内外の波は, K Oの始点P Oから降ろした試料表面上のP’Oを結ぶ法線と分散面との交点(伝波点,あるいは,分散点)P O, P 1, P 2, P S, P Hと逆格子点O,あるいは,Hを結ぶベクトルで表される(図2).つまり, K S=PO,K H=P H H,屈折波ベクトルk oj=PO j,結晶内回折波ベクトルk hj=PH j.ほぼ回折条件を満たす場合,結晶内の波は逆格子ベクトルHで結びつけられる.k = k + Hhjoj(1)P’Oは図2平面図の反射球Oの内側に必ずある.P’OがIに位置する場合(反射球Oの内側で分散面1の外側),回折は起きず鏡面反射のみ起きる.P’OがII(分散面1の内側,反射球Hの外側)にある場合, P 1, P SはあるがP 2, P Hはない.これはK S, k o1が生じる一方,鏡面反射回折波K Hは純虚数の消衰波になることを意味する.以下同様に,P’OがIII(分散面1の内側,反射球Hの内側,分散面1の外側)にある場合,結晶外でも回折条件を満足するとともに,結晶内においてk o1, k h1, K Sが生じる.P’OがIV(分散面2の内側)にある場合,結晶外に3波(K O, K S, K H),結晶内に4波(k o1, k o2, k h1, k h2)が存在する. 2個の全反射臨界角が存在することもこの分散面の幾何学から理解できる. 34)定量的な原子位置の解析のため,電場の振幅を定式化する必要がある.その振幅を表す式は電場と磁場の結晶表面における境界条件と結晶内の電場の振幅比ξj≡D hj/D ojから波数ベクトルの表面垂直成分(添字⊥を付けて示す)を用いて表現される.ξjは動力学的X線回折理論における基本方程式から求まり,今回の場合, 31)*3波数K O≡|KO|を用いて,2 2j oj⊥O O o hξ= {( k / K ) ?Φ?χ} / Cχ(2)ES / EO = {( KO⊥?ko2⊥)( ? KH⊥+ kh1⊥)ξ1?( K ?k)( ? K + k )ξ}/ΛEDDH O 2 O⊥h1⊥h2⊥1 2/ E = K ( k ?k )ξξ/Λ/ E =?2K ( ? K + k )ξ/Λo1 O O⊥H⊥h 2⊥2/ E = 2K ( ? K + k )ξ/Λo2 O O⊥H⊥h1⊥1Λ= ( KO⊥+ ko⊥)( ? KH⊥+ kh⊥)ξ?( ? K + k )( K + k )ξ(3)(4)(5)(6)(7)それぞれの波数ベクトルの垂直成分の具体的な式は,図3の幾何学的関係から求められる.屈折波の垂直成分はk oj⊥=K O(α+iβ)と複素数で表現される.αとβは,試料表面に対する入射角ΦO,ブラッグ条件からのはずれ角?θ=θ-θBを含む. 32)12 /? 2 2α=( 1/2) + + ?(8)?s p s?? 2 2β=?( 1/2) ?s + p ?s??s = t+ +H⊥h 2⊥O⊥o1⊥2χorΦ2Ot = C ?2χ?? W±W + ?hr 1?p=χ±Cχcosν/ W + 1oi h i hW =??θsin 2θ/ CχO⊥o1⊥H⊥h 2⊥22 1 1Bhr12 /2(9)(10)(11)(12)(13)*3小章32)中の振幅比の分母の2乗は誤植.本報告の式が正しい.また,そこでは結晶外波を小文字で表記されているので注意.*4χhr=-re(λ2 /πV)Σj(f j+f j ')exp(2πiH・r j)exp(-M),χhi=-re(λ2 /πV)Σj f j " exp(2πiH・r j)exp(-M).古典電子半径r e,波長λ, Vは単位胞体積,原子散乱因子f,その異常分散項f ', f ", e ?Mはデバイ・ワーラー因子.S173日本結晶学会誌第55巻第3号(2013)