日本結晶学会誌Vol55No3

日本結晶学会誌Vol55No3 page 66/82

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日本結晶学会誌Vol55No3

クリスタリット負の熱膨張Negative Thermal Expansion物質の体積が温度上昇に伴い減少する現象.多くの物質では温度上昇に伴い,原子の熱振動が増加するとともに原子間の距離が離れるため,その体積は増加する(熱膨張).このとき体積が温度に対して変化する割合(熱膨張率)は正の値であるが,負の熱膨張では熱膨張率が負の値である.例えば,水やシリコンは限られた温度領域で負の熱膨張を示す. ZrW 2O 8は原子間を結ぶ三次元的な強い共有結合フレームワークのために, 1000 Kにわたる広い温度領域で負の熱膨張を示す.球状のフラーレンC 60も,炭素間の強いsp 2共有結合のために,分子の直径が負の熱膨張を示すことが,理論的にも実験的にも示されている.(名古屋市立大学大学院システム自然科学研究科青柳忍)AB毒素AB Toxin : Active Binding ToxinAB毒素とは, Active(活性ドメイン)とBinding(結合ドメイン)の2つのドメインをもつ毒素タンパク質の総称である.細菌が生産する病原因子である毒素タンパク質はそれ自体が分子マシーナリーのように働く機能を1つの分子内に包括している.すなわち,宿主細胞のターゲットとなる分子へ高い特異性でBindingドメインを用いて結合し,細胞内に侵入する.細胞内を移行した後に, Activeドメインによって標的分子に対して特異的な生物活性を発揮し,時には細胞のみならず宿主に対して致命的なダメージを与える.コレラ毒素やジフテリア毒素,ボツリヌス毒素の神経毒成分など多くの毒素が,このAB毒素に分類される.(京都工芸繊維大学大学院工芸科学研究科北所健悟)232日本結晶学会誌第55巻第3号(2013)