日本結晶学会誌Vol55No3

日本結晶学会誌Vol55No3 page 42/82

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日本結晶学会誌Vol55No3

大島勘二,若林克三図6最適ミオシンフィラメントモデルの構造データのまとめ.(Summary of the optimum model for the frog skeletalmyosin filament.)(a)実測と最適モデルのミオシン層線強度分布の比較.太い実線,計算データ.薄い実線,観測データ.鎖線の強度データはモデル計算に利用しなかった(本文参照).(b)摂動領域のクロスブリッジ配列の軸方向と方位角のずれ(●)を示す動径射影図.○, 9/1らせんの格子点.(c)と(d)フィラメントを上から見たときの規則,摂動領域のクロスブリッジの最適モデル.(e)と(f)フィラメントを上から見たときの1つのクロスブリッジレベルにおける規則,摂動領域の最適モデル.(g)と(h)フィラメントを側面から見たときの規則,摂動領域の最適モデル.(i)と(j)ミオシン頭部間相互作用.(i)と(j)はそれぞれ(g)と(h)における*マーク部分の拡大図.(g)-(j)における黄色はコンバータドメイン部分を示す.スケールバー:10 nm編集部注:カラーの図はオンライン版を参照下さい.位角方向の間隔は~47°,~73°, 0°となった.それは魚の骨格筋, 11)哺乳類の心筋12)ミオシンフィラメントの電顕単粒子解析で報告された値60°, 60°, 0°に近い.(ちなみに規則領域では次のクロスブリッジまでの間隔は40°で,赤道面に投影した構造は9回対称をもつ(図6c).)ミオシンフィラメント全体の中でクロスブリッジの~70%が摂動を伴って配列しているので,赤道面に投影した構造は6回対称の様相が支配的になると考えられる(図6d).またクロスブリッジのらせん半径は摂動領域で~12.7 nm,規則領域で~9.8 nmであった.クロスブリッジの2つの頭部は摂動領域と規則領域で互いに異なる構造をもっていた(図6e, f).規則領域では上から見るとクロスブリッジの2つの頭部が開き,風車のような形態をもつ.またミオシンフィラメントを横から見ると,異なるレベルにあるクロスブリッジの一方の頭部が接触するような配置をとっていて,一方の頭部のモータードメインがほかの頭部のコンバータ部分と相互作用している(図6i).摂動領域ではこの接触が短い周期のクロスブリッジレベル間でのみ起こり,上から見るとクロスブリッジの2つの屈曲した頭部が交差し,同一クロスブリッジの頭部ペア間の側面で相互作用できるような配置にあった(図6f, j).3.2高等動物骨格筋におけるミオシンクロスブリッジの頭部間相互作用68球モデルで示されたミオシンクロスブリッジの配向に頭部の原子構造を当てはめ,原子の衝突を避けるためエネルギー最小化計算を実施した.その後にPDBに登録されている弛緩状態のタランチュラ筋のミオシンクロスブリッジの構造(PDBID:3DTP)2)と比較した(図7).カエルミオシン骨格筋のミオシン頭部とタランチュラ筋のそれのアミノ酸配列の相同性は~48%である.タランチュラは無脊椎動物なのでそのミオシンフィラメントには摂動領域がなく,ミオシン分子のリン酸化によって筋収縮が208日本結晶学会誌第55巻第3号(2013)