日本結晶学会誌Vol55No3

日本結晶学会誌Vol55No3 page 33/82

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概要:
日本結晶学会誌Vol55No3

ヒトMAPキナーゼJNK1の立体構造・機能・安定性に対する遊離システイン残基の置換効果表27種システイン置換変異体の酵素活性と熱安定性.(Enzymatic activities and thermal stability of wild-type JNK1and the seven cysteine mutants. T m and ?H values of M0 and all mutants from fits of a two-state transitionmodel to the DSC data.)(a)M0を100%としたときの相対活性,(b)熱変性の中点,(c)van’t Hoffのエンタルピー変化を算出.JNK1 constructRelative activity(%)aT m1(℃)bT m2(℃)b?H(kJ/mol)c1?H(kJ/mol)c2M010046.254.1477380M1(C245S)110(+10)47.8(+1.6)53.6(-0.5)651(+174)435(+55)M2(C116S)99(-11)49.5(+1.7)53.9(+0.3)793(+142)535(+100)M3(C163A)96(-3)47.8(-1.7)53.5(-0.4)672(-121)388(-147)M4(C79V)95(-1)47.2(-0.6)50(-3.5)765(+93)449(+61)M5(C137V)67(-28)44.5(-2.7)50.4(+0.4)682(-83)385(-64)M6(C213V)23(-44)42.8(-1.7)50.4(0.0)436(-246)356(-29)M7(C41V)24(+1)41.3(-1.5)50(-0.4)367(-69)272(-84)図3非還元SDS-PAGEによるシステイン置換変異体の凝集性.(Non-reduced SDS-PAGE for wild type(M0)and thecysteine-deficient mutants(M1-M7)incubated under non-reducing conditions.)測定条件は4, 20℃でインキュベートし, 12時間おきのタイムコースで行った. Aは還元したサンプル.3.3化学的安定性化学的安定性の評価は,還元剤非存在下において試料の酸化的凝集を誘導したのちに非還元SDS-PAGEにより行った. M0~M2では2~4量体の形成が見られた(図3a~c).特に, M0では時間および温度依存的な多量体の形成が著しい(図3a).一方, M3~M5では多量体の形成がほとんど見られない(図3d~f).このことからM3までの分子表面システインが酸化的凝集に大きく関与していることがわかる.しかし, M6では温度あるいは時間に関係なく一定量の2量体の形成が見られた(図3g).これはフォールディングの過程で2量体化したものと推察される.遊離のシステインのないM7には多量体の形成がまったく見られなかった(図3h).日本結晶学会誌第55巻第3号(2013)3.4熱安定性M0およびM1~M7変異体の熱安定性を示差走査熱量計(DSC)を用いて評価した.すべてのJNK1変異体は不可逆的な変性を示し, 2つの熱変性転移をもつ三状態転移を示すことがわかった(図4).それぞれのDSCカーブのデコンボリューション解析より,熱変性中点(Tm)とvan’tHoffのエンタルピー変化(?H)を算出した(表2). T m1と?H 1は低温側の転移(T m1 transition), T m2と?H 2は高温側の転移(T m2 transition)の値を示す. T m1は, M2で最も高い値となり,次いでM1とM3の順に高かった.しかし, M5~M7のT m1はM0より低下していた.また,すべての?H 1は,T m1とおおよそ正の相関を示したが(表2), ?H 2とT m2には相関は見られず, M0と同様のT m2であったM1~M3と,M0に比べて約4℃と大きく低下するM4~M7の2つの199