日本結晶学会誌Vol55No3

日本結晶学会誌Vol55No3 page 32/82

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概要:
日本結晶学会誌Vol55No3

仲庭哲津子,深田はるみ,黒木良太,木下誉富異体を調製し,個々の変異体について化学的安定性,酵素活性および熱安定性を評価した.さらに7つの変異体のX線結晶構造解析を行い,各システイン残基置換体の諸性質と立体構造の相関について考察した. 7)2.システイン置換変異体の構築システインへの変異導入は下記の方針で行った.基本的に分子表面に存在するシステインはセリン(C116S,C245S)に,分子内部に存在するシステインはバリン(C41V, C79V, C137V, C213V)に置換した.分子表面のCys163は,基質が結合する疎水性ポケットを構成していること, p38αのC162S変異体の活性が減弱することから, 5)セリンではなくアラニンに置換した. 6)分子内部をバリンにしたのは,システイン存在部位が疎水性クラスター領域であったことと,バリンはシステインと最も近い体積を有しているためである.変異体は分子表面のシステインから始めて, 1つずつ変異を付加し行っていった.それらを野生型M0に対し,変異体M1~M7と命名した(表1).図1表1M1M2M3M4M5M6M7JNK1の全体構造とシステイン残基の位置.(JNK1structure and cysteine residue sites(PDB ID:1UKH).)球体(濃色):分子内部システイン残基,球体(薄色):分子表面システイン残基.点線はディスオーダーした活性化ループを示す.システイン残基の変異部位.(Sequence positions ofthe substituted cysteine residues.)C245S+++++++C116S++++++C163A+++++C79V++++C137V+++C213V++C41V+3.システイン置換変異体の諸性質3.1生産性JNK1タンパク質の生産性には,タンパク質の発現および精製段階における安定性が寄与すると考えられる.そこで,まずシステインの置換に伴うJNK1タンパク質の発現量への影響を調べた.野生型M0および変異体M1~M7を同条件で発現させたところ,全菌体における発現量は,すべての変異体においてM0と同等であったが(図2a),可溶性画分/不溶性画分の比率に大きな変化が見られた.M0と比べて, M1→M4と変異を重ねるごとに可溶性画分が増加傾向にあるが(図2b), M5→M7と不溶性画分比率が急激に増加していった(図2c).最終精製まで加味すると,最も生産性が向上した変異体は,すべての表面システイン残基を置換したM3あるいはM4であった.3.2酵素活性調製したJNK1はそのままでは不活性状態であるため,酵素活性測定は各JNK1タンパク質を上流のキナーゼMKK4およびMKK7によって事前に活性化して行った. 8)表2に, M0~M7の比活性を示す. M1~M4はM0と同程度の活性を示したが, M5では67%と活性低下が見られ,さらにM6, M7では23%, 24%と大きく低下することがわかった.図2大腸菌生産によるJNK1の発現量.(SDS-PAGE showing the productivity of JNK1 proteins by bacteria.)198日本結晶学会誌第55巻第3号(2013)