日本結晶学会誌Vol55No3

日本結晶学会誌Vol55No3 page 24/82

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日本結晶学会誌Vol55No3

岩田忠久図2代表的な微生物産生ポリエステルの化学構造式.(Chemical structures of microbial polyesters.)図3P(3HB)の分子鎖構造と結晶構造.(Molecular and crystal structures of P(3HB).)(左)高強度繊維のX線繊維図と2種類の分子鎖構造(2回らせん構造(α構造)と平面ジグザグ構造(β構造)),(右)α構造の結晶構造.ト-co-4-ヒドロキシブチレート](P(3HB-co-4HB))などが挙げられる(図2).3.結晶構造と球晶構造P(3HB)の結晶構造は,格子定数:a=0.576 nm, b=1.320 nm, c(繊維軸)=0.596 nm,空間群:P2 12 12 1を採り,単位格子中に2本の分子鎖を有し,すべての結晶軸に対し2回らせんの対称性を有する斜方晶系である. 6)図3に,P(3HB)の結晶構造(α構造)6)と2種類の分子鎖構造7),8)を示す.配向結晶性フィルムや単結晶中に存在するP(3HB)の分子鎖構造は,分子鎖軸に沿って2回らせんの対称性を有している(α構造).一方,高強度フィルムや繊維には,高強度化に寄与する平面ジグザグ構造(β構造)の存在が知られている.融点180℃を有する熱可塑性ポリエステルであるP(3HB)を溶融した後,等温結晶化した溶融-結晶化フィルムにおいては,図4Aに示すマルテーゼクロスと消光リングを有する三次元球晶が形成される.この球晶は,厚さ数ナノメーターのラメラ結晶が束となったロッド結晶が,ねじれながら三次元的に成長することにより生じる(図4B).フィルムの厚さを薄くするに伴い,ロッド結晶のねじれが抑制された図4Cに示す二次元成長結晶が見られるようになる. 9)二次元成長結晶の表面では,ラメラ結晶が積層した様子が透過型電子顕微鏡で観察され,電子回折から分子鎖図4溶融結晶化フィルムの高次構造.(Highly orderedstructure of melt-crystallized film.)(A)三次元球晶の偏光顕微鏡像,(B)ねじれを伴ったラメラ結晶,(C)二次元球晶の偏光顕微鏡像,(D)薄膜中に形成した二次元球晶の透過型電子顕微鏡像と電子回折.はラメラ結晶表面に対して垂直に配列していることがわかる(図4D).4.単結晶の構造高分子物質には大きく分けて結晶領域と非晶領域が存在し,単結晶は材料中の結晶領域の1つを取り出したもの190日本結晶学会誌第55巻第3号(2013)