日本結晶学会誌Vol55No3

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日本結晶学会誌Vol55No3

片岡邦光DMCの混合溶媒中にLiPF 6を溶解させたものを電解液,負極にLi金属を用いたLi二次電池を作製し, Liイオンの挿入・脱離試験を行った.3.3多結晶試料による結晶構造解析Na 2Ti 6O 13多結晶試料は,測定した粉末X線回折データを既報18)の結晶データを基にRietverd解析を行い,結晶構造の精密化を行った.Li 2Ti 6O 13多結晶試料は, Na 2Ti 6O 13の結晶構造とはアルカリイオン席の変化に伴い空間群が変化する可能性が考慮されるため,既知データを用いるRietveld解析ではなく,粉末未知構造解析を試みた.測定した粉末X線回折データから,プログラムN-TREOR 19)により,直接,格子定数,空間群の候補を求めた.またTEM(JEOL-2010)による制限視野電子線回折測定を行い, N-TREORの格子定数,空間群の候補から,電子線回折像と整合性のとれる候補を用いてLe Bail法によるパターン分解を行った.次にパターン分解によって得られた積分強度データを用い,プログラムSuper flip 20)によるCharge flipping法により初期構造モデルを推定した.得られた初期構造を基に,粉末X線回折データを用いて, Rietverd解析を行い,(Ti 6O 13)2?からなる骨格構造を決定した.決定した結晶構造データ(骨格構造)と粉末中性子回折装置(JAEA, JRR3M beam line T1-3, HERMES, 21)λ=1.8024 A,スキャンステップ0.05°/s測定範囲7°≦2θ≦157°)による粉末中性子回折データを用いて, Rietveld解析により結晶構造の精密化をした.差フーリエ合成を行い,明瞭な負の散乱長密度を探索することでLiの位置を推定した.またLi席数の確認を7 Li-MAS-NMRによる測定を行った.最後に推定されたLi位置を含めて,粉末中性子回折データを用いた, Rietveld解析により結晶構造の精密化を行った.3.4多結晶試料の評価合成されたNa 2Ti 6O 13多結晶試料の粉末X線回折データを文献18)の結晶構造を初期モデルにしたRietveld解析を行った結果,独立反射数581点を使用し,格子定数はa=15.131(2)A, b=3.745(2)A, c=9.159(2)A,β=99.30(5)°,信頼度因子RwpおよびGOFはそれぞれ, Rwp=11.77%, GOF=1.25となった.図6に精密化されたNa 2Ti 6O 13の結晶構造を示す.またICP-AESによる化学組成分析結果,組成比はNa:Ti=2.09:6となった.この結果は組成式とおおむね一致するものであった.3.5 Li 2Ti 6O 13多結晶試料の評価と粉末X線構造解析290℃, 320℃, 350℃および380℃でLiNO 3溶融塩によりNa+/Li+イオン交換反応を行った. 380℃においてイオン交換処理を行ったLi 2Ti 6O 13は, ICP-AESの結果から,組成比がLi 1.97Na 0.03Ti 6O 13であり, Naの残留がわずかである.したがって以後の実験では,この試料をLi 2Ti 6O 13図6 Na 2Ti 6O 13の結晶構造.(Crystal structure of Na 2Ti 6O 13.)図7 a)(Ti 6O 13)2?骨格構造. b),c)粉末中性子回折データを用いたLi 2Ti 6O 13の差フーリエ合成マップ.((a)The(Ti 6O 13)2? framework in the Li 2Ti 6O 13 structure.(b),(c)The difference Fourier synthesis maps ofLi 2Ti 6O 13 using the powder ND data.)b)はy=0のac面, c)はy=1/2のac面.として解析が可能であると判断した.また粉末X線回折パターンから,既知の不純物相は確認されなかった.N-TREORにより推定される格子定数と空間群の候補のうち,最もフィッティングが良いLe Bail解析の結果,a=15.347 A, b=3.753 A, c=9.149 A, andβ=99.441°,空間群C2/mですべてのピークが説明できることがわかった. Li 2Ti 6O 13の電子線回折パターンもLe Bail解析の格子定数,空間群で説明が可能であった.次にLeBail解析によるパターン分解の結果を用いて, Charge flipping法により初期構造の導出を行った.この初期構造と粉末X線回折データを用いてRieveld解析結果a=15.3244(2)A, b=3.74847(2)A, c=9.1429(1)A, andβ=99.419(1)°,信頼度因子Rwp=14.28%,GOF=1.54と良好な結果が得られた.この結果,骨格構造(Ti 6O 13)2?はNa 2Ti 6O 13と同一であることがわかった.次にこの骨格構造のを初期構造として,粉末中性子回折データにおいてRietveld解析を行った.信頼度因子Rwp=11.24%, GOF=3.24であった.三次元の差フーリエ合成マップと精密化された骨格構造(Ti 6O 13)2?の配位子を図7に示す.中性子回折においてLiは負の原子核散乱長密度分布を示す.図7bでトンネル内に明瞭な負の残差が見られる.仮にトンネル内に水分子など外部から吸収されている物質がなければ,この残差はLi位置であると推定される.またこの位置は,トンネル内での乱れも見られず, 1種類184日本結晶学会誌第55巻第3号(2013)