日本結晶学会誌Vol55No3

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概要:
日本結晶学会誌Vol55No3

新規リチウムイオン電池負極材料の開発とその結晶学的評価表3AtomLi1Li2Ti1Li3O1Li 4+xTi 5O 12の結晶構造パラメータ.(Atomiccoordinates and equivalent isotropic displacementparameters(A 2)for Li 4+xTi 5O 12.)Site8a16d16d16c32ePop.0.77(6)x1/8y1/8z1/80.1667(-)1/20.8333(-)1/21/21/21/21/20.340(2)0001.00(-)0.263(1)0.263(1)0.263(1)図5リチウムイオン挿入前後の電子密度分布.(Elctrondensity distributions of Li 4Ti 5O 12 and Li 4+xTi 5O 12(x=1.35).)でのLiイオンの脱離などに原因があると考えられる.またLi 4Ti 5O 12は二相反応でLiイオンの挿入・脱離が起こることが知られている.したがって本研究では,測定中でのLiイオンの脱離による,二相状態の平均構造を解析している可能性もある.しかしながら,単結晶試料を用いた本研究結果により, Liイオンの挿入位置が16cサイトであることが明白となった.本研究における精密化後の原子位置,原子変位パラメータ,結合距離をそれぞれ,表3,表4に示す. 16dサイトの占有率は精密化せず,原子変位パラメータはLi2とTi1で等しいものとして精密化を行った.次に,実験電子密度解析を行った.電子密度分布解析は,単位格子内の全電子をF(000)=592.1,単位格子におけるピクセル分割数120×120×120, 132本の独立反射(sinθ/λ=1.2946 A ?1)を用いて行った.この解析から得られたLi 5.4Ti 5O 12の電子密度分布を図5bに示す.また参考として図5aに挿入前の電子密度分布を示す.図5に示す電子密度分布により挿入されたLiイオンが初めての可視日本結晶学会誌第55巻第3号(2013)U eq0.041(5)0.0083(8)0.0083(8)0.004(2)0.0085(2)表4 Li 4+xTi 5O 12の非等方性原子変位パラメータ.(Anisotropic displacement parameters(A 2)for Li 4+xTi 5O 12.)AtomLi1Li2Ti1Li3O1U 110.041(9)0.0083(1)0.0083(1)0.004(4)0.0084(1)U 22U 11U 11U 11U 11U 11U 33U 11U 11U 11U 11U 11U 1200.0002(4)0.0002(4)0.00(1)-0.00000(5)U 130U 12U 12U 12U 12U 230U 12U 12U 12U 12化に成功した.ほかのサイトに電子密度分布が見られないことから挿入サイトは16cサイトのみであり,またLiイオンの挿入により元々存在していた8aサイトのLiイオンが16cサイトに移動することが明らかとなった.この結果から,この結晶構造はLiイオンの最大挿入量は3個(最大挿入時の化学式はLi 7Ti 5O 12)であり,結晶構造の制約により理論容量は175 mAh/gであることが明らかとなった.3.新規リチウムチタン酸化物Li 2 Ti 6 O 13多結晶試料に関する研究3.1研究目的前述までのLi 4Ti 5O 12単結晶試料を用いた研究で,この物質は結晶構造の制約により,理論容量は175 mAh/gであることが明らかとなった.これ以上の容量を有する酸化物負極材料を開発するとなると, Li 4Ti 5O 12ではなく異なる結晶構造を有するチタン酸化物を探索する必要がある.しかしながら,単純な固相反応で合成されるLi-Ti-O系は,多くの研究報告があり新材料を合成するのは難しい.そこでNa-Ti-O系に注目してNa+/Li+イオン交換合成による新規化合物の合成を目指した.過去の既報に,層状構造を有するNa 2Ti 3O 7からNa+/Li+イオン交換合成によりLi 2Ti 3O 7を合成,リチウムイオン二次電池試験を行った報告がある. 15)またトンネル型構造Na 2Ti 6O 13についてNa+/Li+イオン交換合成を行った例も過去にはあるが,ほとんど交換反応はしないと報告されている. 16)このNa 2Ti 6O 13は最近リチウムイオン二次電池として試験され安定的にサイクルすることが知れている. 17)今回,このトンネル型構造Na 2Ti 6O 13について再度Na+/Li+イオン交換処理を再検討を行い,トンネル型構造Li 2Ti 6O 13の合成および結晶構造,リチウムイオン二次電池特性を明らかにすることを目的とした.3.2多結晶試料合成Na 2Ti 6O 13の多結晶試料は, Na 2CO 3粉末(4N)とTiO 2粉末(4N)を,モル比Li 2CO 3:TiO 2=1:6で秤量,エタノールによる湿式混合,アルミナるつぼに充填後, 1073 K,20 h焼成して合成した.Li 2Ti 6O 13の多結晶試料は, Li 2Ti 6O 13多結晶試料をLiNO 3溶融塩中(290℃, 320℃, 350℃, 380℃), 10 hでNa/Liイオン交換処理を行い合成した.合成したNa 2Ti 6O 13多結晶試料, Li 2Ti 6O 13多結晶試料は, ICP発光分光分析(PerkinElmer, Inc., Optima 3000)による組成分析を行った.また合成された多結晶試料は,粉末X線回折装置(RIGAKU,RINT2550V,ターゲットMo,管電圧40 kV,管電流200 mA)により,スキャンスピード0.02°/s測定範囲5°≦2θ≦140°で回折強度を測定した.合成した多結晶試料を正極活物質,導電材としてAB,結着材にPTFEを用いて正極を作製した.その後, ECと183