日本結晶学会誌Vol55No3

日本結晶学会誌Vol55No3 page 12/82

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概要:
日本結晶学会誌Vol55No3

坂田修身図10理想に近い表面から実材料に向けて材料工学基礎としての構造評価の取り組み.(The author’s brief researchhistory.)1986-2012.左側は表面,右側は薄膜,上側はより良質な結晶試料,下側は通常の結晶試料.左上,左下,右上,右下と取り組んだ.電圧印加中の薄膜試料の回折強度と電気分極とをマイクロビームを用いナノ秒オーダーの時分割測定することが可能なシステムを構築し,強誘電体薄膜の電歪係数,ピエゾ定数を決定した. 2),46),47)ークと呼ばれる.試料を-90°回転した場合,筋状の回折像は観察できなかった(図9c).また,試料を45°回転した場合(図9d),筋状の回折像は弧になった.これらの結果は,試料が一次元構造を有すること,さらに,作製時の細線と平行方向に2倍周期構造を保持していること(図9b)を示す.このことから,シリコンに埋め込む際に用いられた基板高温処理の過程においてビスマス細線はこわれることなく,その細線内部ではダイマー構造のBi原子をもっていると考えた.中央の筋状の反射像の幅から,細線は100 nmの干渉距離をもつことも明らかにした.密度汎関数法によって提案された構造モデルは,ビスマス原子のペア構造とビスマス原子の一部が共有結合していないために生じる欠陥空孔を有する.4.おわりにX線が試料表面に対してスレスレな角度で入射し,かつ,表面にほぼ垂直な網平面で回折される配置において生じる波と微小角定在波をまず議論した.次にその微小角定在波法を用い, Si表面のAs吸着面内構造を構造モデルなしで解析した結果やGaAs上のCa 0.39S r0.61F 2薄膜内で形成される波動場を観測した研究を紹介した.さらに,試料角度を固定した逆格子マッピング法を,表面上のNiO細線や内部に埋もれたBi原子細線やAu電極界面,および,Bi 4Ti 3O 12薄膜の構造評価へ適用した結果をまとめた.例として, Bi原子細線の構造評価を紹介した.本報告では,約10年かけて構築した,電圧印加中の薄膜試料からの回折強度とそのX線照射位置の電気分極とをマイクロビームを用いナノ秒オーダーで時分割測定することが可能なシステム2),46),47)については記述しなかった.そのシステムが利用され強誘電体薄膜の新規開発に役立つことを期待している.大学院生のとき,結晶性の高い薄膜がいずれ材料として出てくると思い,そういった材料の原子スケールの構造を評価することを夢想し,青写真を描いた.与えられた仕事に無我夢中で取り組み続けた約4半世紀後,その青写真に少し近づけた(図10の☆印は学会賞に関係する部分)かもしれない.これも,人生で出会った皆様のおかげである.まさに縁尋機妙を感じる.文献1)坂田修身,吉本護,三木一司,中村将志,舟窪浩:日本結晶学会誌49, 292 (2007).2)坂田修身:ナノ学会会報7, 79 (2009).3)坂田修身:日本表面科学会誌33, 492 (2012).4)W. C. Marra, P. Eisenberger and A. Y. Cho: J. Appl. Phys. 50,6927 (1979).5)P. Eisenberger and W. C. Marra: Phys. Rev. Lett. 46, 1081(1981).6)T. Takahashi,S. Nakatani,T. Ishikawa and S. Kikuta: Surf.Sci. 191, L825 (1987).7)T. Takahashi and S. Nakatani: Surf. Sci. 282, 17 (1993).8)I. K. Robinson: Phys. Rev. B 33, 3830 (1986).9)原田仁平:日本結晶学会誌32, 213 (1990).10)G. H. Vineyard: Phys. Rev. B 26, 4146 (1982).11)A. M. Afanas’ev and M. K. Melkonyan: Acta Cryst. A 39, 207(1983).12)B. W. Batterman: Phys. Rev. 133, A759 (1964).13)S. Annaka: J. Phys. Soc. Japan 23, 372 (1967).14)S. Kikuta, T. Takahashi and Y. Tuzi: Phys. Lett. 50A, 453(1975).15)T. Takahashi and S. Kikuta: J. Phys. Soc. Japan 42, 1433(1977).178日本結晶学会誌第55巻第3号(2013)